石段
大きくて高い石段がある。
皆、石段を登っていく。軽やかに駆け登る者、やっとの思いで登る者、誰かと肩を並べて登る者、いろんな人達が石段を登っていく。登ることはやめない。ひたすらに上を目指して登っていく。
時折、転げ落ちる者がいる。それは石段を登るのを諦めた者だ。私たちは転がり落ちる者を見ながら、それでも自分は石段を登っていくのだ。上に何があるか知らなくとも。
わたしは、立ち止まり見下ろす。まだここまでしか登っていないのか。それとも、もうここまで登ってきたのか。
わたしは石段に座り込む。登っていくほどの力はなくて、かと言って諦め転げ落ちるほどの覚悟もなくて。ただ、ただ、登っていく人達の邪魔にならぬように石段の隅で。
1人座り込む。わたしはどうしたらいいのだろう。このままでいいのだろうか。石段は冷たい。